吾輩は燕麦である

 

猫の草の記事 Tuesday, 2004 / 06 / 22

猫がかいた記事 makebono

「やあ、猫君、ちゃんと水を飲んでるかい。僕は飲ませて貰えなかった『たのしくなさ草』だよ」

ネットアイドルを目指す「たのしくなさ草」クン近頃は草を見て恐怖するような吾輩ではないが、話しをされると面倒だから知らぬ顔をして行き過ぎようとした。草の性質として他が己れを軽侮したと認むるや否や決して黙っていない。

「こうなっちゃった今じゃあ分らないんだけどさ、最初の僕は『燕麦』だったと思うんだ。エンバク。『Avena sativa L.』って立派な学名も付いているイネ科の植物だよ。広い畑に蒔かれて、ちゃんと水を飲ませて貰っていたら、仲間の稲や麦みたいにもっともっと伸びたはずなんだ。穂も付けて、実もならせるさ。燕の羽根に似た形のね。それで『燕麦』って名前で知られるようになったんだよ」*137-1

草は吾輩の有名になったのを、まだ知らんと見える。説明してやりたいが到底分る奴ではないから、まず一応の挨拶をして出来得る限り早く御免蒙るに若くはないと決心した。「いや草君おめでとう。不相変元気がないね」と尻尾を立てて左へくるりと廻わす。草は茎葉を下げたぎり挨拶もしない。

「何おめでてえ? 燕麦でおめでたけりゃ、燕の穂なんざあ付いたら写真機が壊れていても借りて来ちゃうくらいおめでてえ方だろう。気をつけろい、この吹い子の向う面め」

資料写真「燕の穂」(コピーしてお使い下さい)写真機が壊れていても借りて来ちゃうくらいおめでてえ主人が出て来た。燕の穂という句は文学な言語であるようだが、吾輩には了解が出来なかった。

「ちょっと伺がうが燕の穂と云うのはどう云う意味かね」

「へん、鉢の一つは『たのしくなさ草』に育てた癖に、鉢のもう一つには燕の穂が付いた訳が分りゃ世話あねえ、だいたい種蒔きから数えて四十日目だって事よ」

四十日目は数的であるが、その意味に至ると燕の何とかよりも一層不明瞭な文句である。参考のためちょっと聞いておきたいが、聞いたって明瞭な答弁は得られぬに極まっているから、面と対ったまま無言で立っておった。主人は「燕麦はイネ科の観葉植物であるから猫に喰われないよう気を付けて育てるべきだな」と独りで頷いている。いささか手持無沙汰の体である。

*137-1: 大百科事典, 平凡社, 1984, 「エンバク」(星川清親執筆)の項。猫草の茎は高さ60~160cmになるつもりでいたらしい。無茶である。

「燕の実」(汚いのでお使いにならないで下さい)たのしくなさ草君の参考文献によれば、猫草の穀粒はタンパク質、脂肪に富み、オートミールにするほか、ウィスキーなどアルコール原料、菓子材料、みその醸造などに用いられるそうだ。

主人は味噌を醸造しようと云って味噌職人並に早起きをして燕の穂を分解して実を取り出そうとしていた。収穫にはまだ早いように思われる。


犬・猫たのしくなさ草

 

猫の草の記事 Monday, 2004 / 06 / 14

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「MOVABLETYPE 2.661」と云う今や時代遅れになりつつある道具を主人は滅茶苦茶に壊してしまって、どうにも修理が出来ないらしい。負荷率なる数値がたいそう高くなって近頃は首位独走中であると云う。吾輩が文章を無暗にかき直すのが一番の原因だとどやされた。

犬・猫たのしくなさ草猫の誤字脱字はあれども無きがごとし、何をかいても粗探しをされた試しはない。空を踏むがごとく、雲を行くがごとく、水中に磬を打つがごとく、洞裏に瑟を鼓するがごとく、醍醐の妙味を甞めて言詮のほかに冷暖を自知するがごとし。

翻って主人の買い付けて来たこの猫草は如何と見ればどうだ。十日の夕に求めた草が四日目の朝にしてかくのごとし。水遣りはしていたから御前のせいだと主人はなおどやして来る。

この家には如雨露が無いので主人は霧吹で水遣りをしているようだ。「根元に当てないと水を吸わないか知れんからな」と草を掻き分けて吹き付けている。「犬・猫たのしくなさ草」の出来上がりである。

夜に入ってたのしくなさ草は完全に枯死してしまった。今日の経過を洩れなく世界へ伝えようと、主人は写真機を取り上げ「あわわ」と呟いた。写真機も死んでしまったらしい。濡れた手で扱ってもコンクリの上へ落としても糞臭を浴びても海水に浸けても、文句一つこぼさず働らいて来た丈夫な写真機であったそうだ。


犬・猫たのし草®

 

猫の草の記事 Thursday, 2004 / 06 / 10

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犬・猫たのし草®「遂に発見したぞ」と主人がビニル袋をぶら下げて帰って来た。育っている状態の無農薬猫草「犬・猫たのし草®」が別のスーパーな店の花売場で売られていて、税込で三百十五(315)円したと云っている。高いのか安いのか微妙な所である。

この別なスーパーの店の二階は百五円均一店になっていて、不朽の名作の数々も百五円で手に入れる事が出来る。本文は2色刷りで、読む前に役立つ「作品のポイント」「あらすじ」が付された親切な設計が施された本であるのだが、たまたま主人は太宰治の「斜陽」を手に取ってしまったために悪寒と眩暈で少し脳が乱れて、代わりに猫の本*127-1を買って来たと云う。元々は八百四十五(845)円で売られていた本*127-2で、かいた人は空手家らしい。どうも不安な本のように思われる。

実用書の類は色々な著者のを読むのが面白いんだと主人が云うので目を通して見た。猫の草についてもかかれている。

 たとえば、部屋の中で飼われている猫のために、わざわざ草を植える人がいます。ペットショップなどに、猫の食べる草のタネが売られていて、それを苗床にまいて、草を育ててやるというわけです。しかし、これはいくらなんでも、やりすぎではないでしょうか。

これはいくらなんでもやりすぎではないでしょうか
吾輩も空手家先生の意見に賛成である。

空手家先生は動物病院の院長もやっているようだ。気を付けねばなるまい。

*127-1: 横尾清文著, 猫の愛し方・愛され方, ダイソー文庫シリーズ(51), 大創産業, 発行年不明。
*127-2: 横尾清文著, 猫の愛し方・愛され方, ごま書房, 1997。

空手家先生の云わんとしている事は下の通りである。

 こうした飼い主の細かすぎる神経が、猫にもそのまま伝播し、神経質すぎる猫になってしまうことも考えられます。たしかに猫というのは、かわいい動物ですが、かわいさのあまり、やたらにかまいすぎると、それがかえって仇になるということもあるのです。「猫の草」はあったらあったでいいかもしれませんが、わざわざ高いお金を出して用意するまでのことはないでしょう。

主人の神経が細かすぎるとは云い難い。


育たない無印猫草

 

猫の草の記事 Friday, 2004 / 06 / 04

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無印良品猫草栽培セットは二箱組で税込価格二百十(210)円と比較的安価な上に、猫が倒しても土がちらばらず、お手入れが簡単で、上手に栽培できると聞いている。

育たない無印猫草これは何と云う草であろうか。妙に青々としているが妙に短くまた太く、どうも疎らにしか生えていない。写真には写らずに済んでいるが、穂先のほうは枯れはじめているようだ。

主人は猫草が甘く育ったのを自慢した日の翌日から育てはじめた「無印猫草」であるぞと主張している。旬が来るまでの日数は七日から十日が目安で、これは既に十二日が経過しているから喰えと云う。吾輩は挑戦だけはやってみたが、こうも短くては喰うに喰えぬ。

どんなお部屋に置いてもなじむ、すっきりとしたデザインの猫草を屋外に置いて陽に当てながら育てたのが原因であると思われる。朝のうちに丼と云う鉢受に水を張った猫草のほうは昼過ぎには空になっている。主人は「鳩野郎が来て水を飲んでいやがるに違ない」と云っているが、兄者の話では「来てねーよ」だそうである。

もう一週間ほど経った日に、もう少し育っている写真が撮影された。右下に写っているのが今日になって慌てて育てはじめられた無印猫草で、その後ろにある屑見たようなのが今日撮影された無印猫草である。


猫草や 吐かない猫と 吐く猫と

 

猫の草の記事 Thursday, 2004 / 05 / 27

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最長記録を更新続けたはいいが不人気な猫草皐月十一日に主人によって適当に種蒔きをされ、その後二十二日には観葉植物と分類されて屋外へ追いやられてしまった猫草は、九寸(28cm)の長きにまで育った。ここまでにしまうと穂の重さで草が折れてしまい、根っこの方は根っこの方で大分窮屈そうである。吾輩と兄者で主人の隙を見計らって失敬したところ、堅くて筋だらけで頗るまずかった。

主人は青汁を想定してこの草を口に入れて見たそうだが、青臭さは寧ろ感じられず、瑞々しくもあり、強いて云うなら西瓜の皮が一番近いように感じると云う。それでも主体は繊維質ばかりで、噛んでも噛んでも繊維が延々と口の中で自己主張を続けるので飲み込む事が出来ないらしい。ガムや鯣の代用品とすると好いかも知れぬ。

吐かないまけぼの吾輩はこの家を自分の住家と極める事にしてより以来、腹加減を悪るくした事は一度も無い。古代羅馬人に倣って方丈の食饌を味わわんがために嘔下するような真似は御免であるし、腹の中へ入れた滋養分を吸収せぬ内に水便と流してしまうのも憚られる。猫草を吐くなど以ての外である。

一般には、豊富な脂肪に包まれた猫は内臓にも脂肪を蓄えがちで、便秘の虞があるとも云われている。ところが主人と名乗る素人学者の触診によれば、吾輩の喰った者は消化されつつ競うようにして下腹部へと移動し、翌日には見事な糞となって捻り出されるそうだ。

吐くサップ兄者は元より嘔吐を趣味としている。猫草が有ろうが無かろうが、慌てて喰い過ぎたと云っては吐き、馴染みの無い高級料理を喰ったと云っては吐き、その一方ではこの粒はもう飽きたと云って吐き、酸化していると云って吐き、腹に毛が交って来たと胃液を吐き、吐くと主人が飛んで来てくるから面白いと云ってはまた吐いている。

吾輩も兄者も軽く半年は猫草を喰わせて貰っていなかったが、卯月十二日になって漸く御馳走に預かる事ができた。兄者はその日のうちに二度ほど吐き戻したが、吾輩には一向変化が無い。尤も瑞々しい若芽で腹が膨れるのは結構な事である。

卯月二十三日、兄者は口から糞を吐いた。兄者のような短毛種にはそれほど心配が無いとされている毛玉の塊で*109-1、俗に云う「毛玉症」である。この家のヘルシー猫ちゃんモデルとして活躍して来た兄者であるが、毛玉を吐いてよりこのかた食欲は頗る旺盛になり、運動量も増加し、モデルとしての地位が危ぶまれている。

話は変わるが、人間の胃液は胃酸と云う強酸性物質を主な成分としている。猫の胃液もそう変わらないと推測できるのだが、兄者はまたしても吃驚芸を披露しようと、猫草と共に超アルカリゲロを吐き出した。

強アルカリゲロ

主人の使っている試験紙*109-2は数年前に購入した者で、色見本が日焼けをして変色しまっているので余り頼りにならないが、酸っぱい飲物に浸けると辛うじて赤くなる。どうも猫の吐瀉物は直前に喰った者に左右されると見えて、計った所で意味は無さそうである。

いずれにせよ、これで吾輩は堂々とゲロを喰う権利を獲得したと云えよう。晴れ晴れとした心持でいた所へ主人がこう尋ねて来た。

「それで御前さんの喰った草は何処へやったんだい?」

*109-1: その後、二十六日には半分に欠けた毛玉が吐かれ、皐月十四日にはその片割れと思しき欠片が出て来た。これで終いかと思いきや、二十一日には柔らかめの毛玉を吐いているのが確認された。
*109-2: アドバンテック社のpH試験紙。写真は色々測れる「WR(Whole Range)試験紙」。中性に近いものを細かく測りたい時は「BTB(BromThymol Bleu)試験紙」を使う。

森乳サンワールドの糞」悪夢再びである。

主人は吾輩の捻り出した八匁(30g)の糞から大きめの三つばかりを取り出すと、ふんむふんむと力を込めて押し潰しているではないか。自動式空気清浄機は爆音を立て、吾輩も兄者も所構わず砂掛け行為をはじめた。主人は涙目になりながら「何が消臭成分ユッカじゃあああああ!」と叫んでいる。

鼻を抓みつつ震える片手で撮影し、新緑をイメイジして加工した写真が以下であると云う。

猫草交り糞

主人よ、足りない頭でよく頑張ったなと声を掛けてやろうとすると、「これでは分りづらい」と云い出した。白い粒は憚りの砂で、糞の真ん中の中りに未消化の猫草が確認出来るらしい。吾輩は臭くて近寄れなかった。

UNKkussa.jpg

草を喰わせても吐かない猫に疑問を抱く飼主が多く見受けられるそうだ。そうした優しいの持主に、未消化のまま無事に排泄される猫草を見せて安心させて遣りたいんだと主人は熱を込めて語った。

その後毛玉を吐いたかどうかは定かではないと仰るしんじょーさん(G.C.BLOG | 毛玉対策)、毛も毛玉も草も下から吐く猫もいるんです!」

吾輩が考えるに、かような行為は人間の世界では「嫌がらせ」と称されるのではなかろうか。


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